シーン3/商業都市グレナダ。 ―可愛い依頼主。―
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「や〜、無事森を抜けられてよかったよね!」

「なんか、しゃべり方変だよお前・・・」


あれからふたりは、やっぱりこれといった危険もなく2、3時間ほどで無事に森を抜けた。

森を出たあとは、森から少し歩いたところにある小さな村に立ち寄り一晩過ごし、

翌日また半日ほど歩いて―

そうして、やっと目的地である「グレナダ」に着いた。




『グレナダ』

『エスメラルダ王国』、いや、規模としては大陸最大とも言われる、商業都市。

そこで手に入らない物はないのでは、と言われる程さまざまな店が軒を連ねるその都市には、

当然数多の人々が行き交う。

「いつ来ても、すごい賑わいだよな」

「ホント。可愛い子もいっぱいいるしなぁ。どうしよ」

「・・・俺に飛び火してこなけりゃ、とりあえずはいいけど。

まあ、常識の範囲内で動いてくれよな」

「いやん、厳しい」

グレナダに来るのが初めてではないふたりは。

久々に感じたそのグレナダの空気に、少しの間浸っていた。

・・・と。


「おにいちゃん達!・・・ねーぇ、おにいちゃん達ってば!!」

突然声をかけられたふたりは、慌ててその声の方向へ視線をやった。

二人に声をかけてきたのは―

ライトグリーンが綺麗なショートの髪に、パープルレッドの大きな瞳。

スカイブルーの色のワンピースを着た、可愛らしい少女だった。


「・・・あ」

と、コウはその少女に思わず目を奪われる。

その少女が、あまりにも―

「ん〜??どうしたの、おにいちゃん?」

「ん、どしたコウ?・・・お、おおっ!?

ま、何々!?あのお堅いコウさんが、まさかまさか!?」

と、二人の声で我に返るコウ。

「あ、ご、ごめん。キミが、知っている人に似ていたからつい・・・」

「そなの?」

「なによぅ。別に照れ隠しでそんな事言わなくたっていいのよぉ?」

「・・・マーク、うるさい」

「あはは!おにいちゃん達、面白いっ!」

二人の前で、その場を必死に取り繕うコウ。


と、そんな会話のやりとりのあと。

あらためて、少女が「そういえばお名前言ってないよね」と言うので。

「ボク、
『テティス』っていうの。みんなは『テディ』って呼ぶけど」

「テティスちゃんっていうのかぁ〜。可愛い名前だね〜」

「・・・。あ、俺はコウ。んで、こいつはマーク」

互いに軽く自己紹介する。それからまた、世間話。


「おにいちゃん達は旅人さんなの?」

と、テティスが質問する。

「旅人っていうか、俺達はハンターやってるんだ」

「そそ。人様から依頼を受けて、パパッとそれを解決しちゃう正義のヒーローなんだよ!」

そうふたりが返すと、それを聞いたテティスがそれまで以上に表情を明るくして続けた。

「ホント!じゃあ、ボクのお願いも聞いてもらえるのかな?」

「もちろん!こんな可愛い子の頼みならなんだって・・・」

「マーク」

いつもの調子なマークをとりあえず抑えて。

コウはテティスに聞き返す。

「どうかしたのかい?」

すると、テティスは「うん」と言ってその“お願い”を話した。

「あのね。ボク、人を捜してるの。

昨日、急にどこかに出かけていって・・・。それからずっと帰ってこなくってね。

今日になってから、こうして捜しているんだけど・・・。見つからないの。だから、誰かに一緒に捜してほしくて」

話を聞いたふたりは、

「そんな、女の子がひとりで大変でしょ。こんな、広い街中を。

・・・これは、男として放ってはおけないなぁ」

「よし。俺達も一緒に捜すのを手伝おうか」

「ホント?嬉しいなっ!!」

テティスの"お願い”を聞き入れることにした。



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